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ロイヤル&スレイヴ!

第4章 3.ウワサのあのコとあの4人


「すみません、斎宮未結さんですか?」

更衣室を後にして、走ること数分後。

たどり着いた自分の教室に足を踏み入れようとしていたところ、

見覚えのない、けれどもおそらく同級生であろう男の子に声をかけられた。

「は、はい。そうですけど…?」

少し走っただけだというのになかなか整わない息のせいで、一言返すので精一杯の私。

おずおずとこちらを伺うようにしていた男の子は、

私が答えると、ぱぁ、と表情を一気に明るくした。


「よかった!俺、さっき楯無先生に斎宮さんを呼んでくるようにって頼まれたんです。転入の書類か何かに不備があったらしくって」

「え!?わ、わかりました!すぐ行きます!」

日ごろから、うっかりやケアレスミスが多い私。

まさか、提出書類でもやらかしてしまっているなんて。

やってしまった、という恥ずかしさのせいで気持ちが焦ってしまう。

私は先生からの伝言を知らせてくれた男の子に早口でお礼を伝えると、
くるりと方向転換してから、また走り出そうとしていた。

「あ、待って待って!俺も一緒に行きます」

「え、でも…」

引き留めてくれた男の子の申し出はとても、とてもありがたい。

けれど。

別のクラスの子だというのにわざわざ待っていてくれた、それだけで申し訳ないのに。

私は返答に迷っていると、男の子の方から話を振ってくれた。

人のいい笑顔とともに。


「斎宮さん、この学校のこと覚えきれてないでしょう?」

ずばり、その通り。

多分職員室だよね、と目的地をなんとなく思い浮かべてみても、この広い学内から迷わずに職員室を目指せる自信もなく。

不安を抱えていた矢先に図星を突かれると、もう私に断る理由なんてなくて。

彼の申し出に甘えて一緒についてきてもらうことにした。

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