
ロイヤル&スレイヴ!
第4章 3.ウワサのあのコとあの4人
心がせいていたせいでいつもより逸る気持ちがあったのは否めない。
そのせいで、注意力散漫だったことも。
落ち着いて考えてみれば、違和感に気付けたはずなんだ。
本当に先生からの伝言なら、どうして同じクラスの子にではなく、違うクラスの東堂くんに頼んだんだろう、とか。
先生の担当教科は、現代文や古典で。
あまり映像を使った授業はしない、とか。
そもそも各教室に大きなプロジェクターがあるから、視聴覚室は授業で使うことは殆どない。
転入してきてこの学校の勝手がわかっていないという事情を差し引いたとしても、
私は迂闊だった、としか言えない。
「へーえ。近くで見るとますます可愛いね。さすがあいつらのお気に入りだ」
コツン、コツンと足音を響かせて近づいてくる東堂くんは、
この薄暗い教室にそぐわない明るいトーンで話す。
無邪気に微笑んで見せる彼からは不気味さすらうかがえた。
その不気味な笑みが合図かのように、
私を取り囲んでいる他の男子生徒たちもニヤニヤと口元を歪める。
誰のことを指しているのかわからない「あいつら」という言葉に引っ掛かりを覚えるけれど、
それを尋ねたってどうにもならないことは、馬鹿な私にでもわかる。
「――いったい、どういうつもりなんですか。なんで、こんな」
精一杯のせめてもの虚勢で声を絞り出した。
耳に届く自分の声はひどく震えていて、滑稽なほど情けない。
そんな滑稽さを彼らも感じ取ったのか、示し合わせたように一斉に笑い出した。
