テキストサイズ

ロイヤル&スレイヴ!

第4章 3.ウワサのあのコとあの4人


「震えちゃって、かーわいっ」
「そのカオ堪んねぇー!」

嫌に飛び交う歓声は突き刺すように強くなった。


私が何を言っても、何をしても、彼らを喜ばせることにしかならない。


「東堂さん、早くやりましょうよ」

誰かが陽気な響きで言った。

その後に続く口笛や同意の声達。

まるでどこか遊びに行こうとでも提案するような物言いと、

それに賛同する明るい調子の彼らに、私は足底から悪寒を感じた。



このままじゃ。



不意にひやりとしたものが背中にあたる。

後ずさろうとして、扉にぶつかったせいだ。


触れた振動で、ガタンと、扉がわずかに軋む。

無駄だとは思いつつ、後ろ手で扉を引いてみる。

けれど、ガチャガチャと悲しく金属音が鳴り響くだけで、少しも動く気配はない。


目の前には自分を囲み込む生徒たち。

背中は逃げ場のない、開かずの扉。

私を取り巻く全ての状況が、絶望的だった。


「恐怖で慄いてるカオっていうのもいいね」

ぐっと距離を詰めてきた東堂くんは、そのまま私の頬にぬるりと手を伸ばしてきた。


「い、嫌っ!」

自分の目の前に伸びてきた手、それが酷く恐ろしく思えて、私は顔をそらしては、咄嗟に彼の腕を引っ叩いた。

「あ…」

はっとなって思わず彼を見る。

東堂くんは一瞬目を見開くと、くっと喉を鳴らした。

そして乱雑に前髪をかき上げる。


彼はもう笑みを浮かべていなかった。

代わりに瞳に宿したのは仄暗い苛立ちの色。


氷が滑り落ちるような寒気が全身を走った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ