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ロイヤル&スレイヴ!

第2章 1.ここが土鈴学園

言われてはじめて気づいた様子の男の子は、ほんとだー、と顔をしかめている。

長袖のシャツは肘まで捲り上げていたようなので、破けたり汚れたりはしていないけど、それだけに腕の怪我は目立った。

私は鞄の中を漁る。

今日は午前中のみの授業(というか新入生の入学式)なので、ほとんど何も持ってきていなかった。

見つけたのは、登校途中に買ったきり未開封のミネラルウォーター、タオル、ハンカチ。

救急箱代わりにしているポーチは家においてきてしまったので、絆創膏も消毒液もない。

けれど、水があるので傷口を洗うことはできそうだ。

「あの……手当てさせてもらってもいい、ですか?」

「あ、大丈夫だよ!こんなの」

そういって彼はくるりと方向転換して去っていこうとする。

私は慌てて、怪我をしていないほうの腕をつかんで引き止めた。

「だ……だめ!」

自分でもびっくりするくらい大きな声だった。
だから男の子のほうはもっと驚いて、というかあっけにとられていた。

「あ、あの怒鳴ってごめんなさい。
その……軽い怪我でも、バイキンとか入っちゃったら治り悪くなっちゃうし、痕とかも残りやすくなっちゃうから、その……」

自分でも何言ってるのかわからないくらいしどろもどろだった。

恥ずかしくて死にそう。

真っ赤になった顔を隠したくて、うつむく私。

すると、頭にあったかい感触がした。

「そっか。ありがとう」

テンパった私を面白がるわけでも怒るわけでもなく、男の子は優しい声で笑いかけてくれた。

あったかい感触は、彼の手だった。

必死になった自分が恥ずかしいのと、男の子の笑顔が素敵だったのとで二重にドキドキしてしまう。

「……えっと、じゃあここの木陰のところに座ってもらっていいですか」

「了解。腕はこの辺に出しといていい?」

「あ、はい」

手頃なところに木陰を見つけたので、そこに移動し男の子には座ってもらった。

木の幹の近くに腕を伸ばしてもらう。

私は鞄の中のミネラルウォーターのペットボトルを取り出し、蓋を開けた。

近くに蛇口や水飲み場を見つけることができればよかったんだけど。
転入初日の私に、蛇口のある場所を探すのはっ難しいことだった。

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