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エンドレス

第18章 嫉妬と興奮

ほんの少し時間を戻す。
久美と直哉がお風呂に入った場面・・・

クローゼットの中で、薫は息をひそめていた。

お風呂場から微かに聞こえる久美の声・・・

・・してるんだ・・セックス・・・

何度も聞いている久美の甘いあえぎ声。
聞きたくない・・・

今ならそっと脱け出せる。
そうだ、外に出よう・・・

リビングを抜け、お風呂場の前の廊下を足音を消して通った時だった。

「あん・・だめ・・まだ・・あっ・・もっと・・」

もっと?・・・くみネェのバカ・・・

悲しくて、その場からすぐにでも立ち去りたかったはずなのに、動けなかった。
久美が絶頂に達したであろう、かすれて消えていく最期のあえぎ声まで、その場から動けなかった。

久美のあえぎ声が消えた事を確認して、玄関へと向かい静かに外に出た。
通路を足早に抜けて、エレベーターホールまで来たところでしゃがみこみ、膝に顔を埋めた。

わかっている・・これが本来の久美の生活・・・
8年の空白の間に、久美が築いた家庭なのだ。

頭では理解しているが、どうしようもなく沸き上がる嫉妬・・・
愛する人が別の人に抱かれている・・・
耳から離れない久美の抱かれている声・・・

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