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愛の嵐

第38章 疑弐×倒影=信証

《櫻井時間》

先生「今日は転校生がいる」

夏休みが明けて初日のホームルーム
騒ぎ出す教室は野太い声しかしない
男子校だから仕方ないんだけど

生徒A「格好いいといいなぁ♪」
生徒B「だよねぇ」

たまに耳に入る微妙な声色に溜め息が漏れる

先生「おい、入りなさい」

先生に言われてドアが開く
小柄だが整った顔が入ってくる

櫻「冷めた感じだなぁ」

ポツリと呟いて窓の外に目を向けた
さして興味を持つ事もない
男子校で何を求めろっつ~んだよ
普段口にしない悪態を心の中だけで呟いた

先生「自己紹介してくれ」
大「大野智です。宜しくお願いします」
先生「他に言う事はないか?」
大「これといって何も」
先生「そうか。それならいいが。じゃあ席は」

どうせ俺の隣でしょ
新しく席が作られてるんだから

先生「櫻井の隣だな。櫻井!」
櫻「はい、何ですか?」
先生「ついでだから案内とか頼むな」
櫻「はぁ?はぁ~、分かりました」
先生「大野、分からない事があれば櫻井に聞けば大丈夫だ」
大「はい」

な~にが大丈夫だって?
ったく、面倒押し付けんなよな
こっちに向かって歩いて来る大野くんは
俺を見て一瞬目を見開いた・・ような気がした
よく見れば綺麗な顔してる
最初に見えた冷めた瞳は雰囲気を変えていた

大「大野です、宜しく」
櫻「櫻井です、宜しく」

なんとなくお互い笑顔で挨拶を交わす
出会いは在り来たりで何の変哲もない
同級生が増えただけのはずだった

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