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僕は絵しか描けない

第7章 僕の失恋

妹尾さんと剛史の復縁の抱擁は僕の心を引き裂いた。

妹尾さんはもちろん、剛史も男泣きをしていた。

その光景が段々滲んで見えてくる。

それで自分が泣いていることに気付いた。

でも僕の涙は二人の涙とは全く意味が違う。

失恋の、悲しい涙だった。

けれど二人はそんなことを知るはずもない。

僕の涙の意味を勘違いした二人は何度も握手したり、頭を下げて僕にお礼を述べた。

鈍感な僕でもいい加減自分が邪魔になっていると気づいて、一人で剛史の家をあとにした。

こうして僕の初恋は、終わった。
初恋の人に、感謝されながら。

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