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僕は絵しか描けない

第10章 ファーストキス

着替えて外に出ると既に妹尾さんと剛史は朝食の支度をしていた。

「おはよう」と朝にふさわしい爽やかな笑顔の妹尾さんに思わず僕は目をそらしてしまう。

「おはよう」

目をあわさずに挨拶を返したが妹尾さんは特に気にした様子がない。

詩子さんは僕が徹夜で原稿を書いたのがよっぽど嬉しかったのか、自慢話のように二人に聞かせていた。

なんだか恥ずかしくなる。

剛史も徹夜で寝かせてくれなかったのよ、なんて卑猥なジョークが返ってこなかったのがせめてもの救いだ。

その日はそれからも普段は小馬鹿にしたような態度ばかりの詩子さんがやけに僕に優しくしてくれた。

詩子さんが寝ている間に勝手にキスしてしまったことや、朝方にオナニーのネタにしてしまった罪悪感から、優しくされる度に申し訳ない気分で一杯になった。


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