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近くて遠い

第13章 渦巻く気持ちと交わり

「なぜ用意した服を着ない」


近付く有川様から顔をそらした。



どうしても離れない昼間の情事の光景…。

もやもやして苦しい…。



「おい、聞いているのか…」


だんだんと有川様の声がイラついてくる。



「…………」



しゃべりたくない。


私は目も見ずにずっと黙したまま立っていた。




「いい加減にしろっ!」




激しく怒鳴る声さえも無視して私は窓を見た。




「真希っ!!!!」




名前を呼ばれて、私は思わず身体を揺らした。

そんな私を有川様は手首を掴んで顎をグイッと上へ向ける。


一瞬目に入った苦しそうな有川様の顔に戸惑いながら、私はまた目をそらした。



惑わされない…。こんな人の言うことなんか──




「んんんっ…!」



有川様はそんな私から強引に唇を奪った。


「んはぁ……やめてくださいっ!」


精一杯の力で有川様をはねのけると部屋から出ようと扉に向かって駆け出した。



「待て!」



逃げる私の腕を再び掴んだ有川様は昨日と同じようにそのまま私をベッドに放り出した。



「やめてっ!触らないで!」


「っ…うるさいっ!」



構わずに覆い被さる有川様の重みが身体にのし掛かる。



「抵抗ばかりしやがって…!お前の望みはなんだ!」



怒った目が私を貫く。

望みなんて…聞いてもくれないくせに…どうして聞くの…?


どうしてそんなに私にこだわるの…?




「っ……!
抵抗されるのが嫌なら昼間のメイドさんを部屋に呼べばいいわ!」


私の言葉に有川様の動きが止まった。


苦しい…

何なのこの胸の痛みは…



「見ていたのか…」



はらはらと涙を流す私を見つめながら有川様が呟いた。



「私でなくていいなら、構わないで下さいっ」





バカらしい…私は何を言っているんだろう…。



涙が止まらなくて

勝手に言葉が口から出ていく…。


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