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───────…

急に慌て出した真希に光瑠は困惑した。


「なんだ…そんな壊れた傘、取っといてどうする」


骨も折れて、全く使い物にならないだろう。


「…………」



黙してしまった真希をどうしていいのか分からないまま光瑠はぎゅっと強く抱き締めた。



「傘なんか…いくらでも買ってやる。」


真希に似合うようなもっときれいなやつを…


「捨てさせるぞ。」


光瑠の一言に真希の身体がビクンと反応した。


「ダメっ…捨てないでくださいっ！」


くるりと振り返って真希が涙を溜めて見つめる。


何故…泣くんだ…



真希は光瑠のシャツをぐっと掴んだまま小さく震えていた。



「お願いっ…お願いっ…」


そう何度も呟く真希を光瑠はぎゅっと抱き締めた。



「捨てないから泣くなっ…、お前が泣くとどうしていいか分からないっ…」


最近は笑顔を見せるようになったと思っていたのに…


「すみません…」


「いいから落ち着け。」


光瑠は幼児をあやすように抱き締めながら真希の頭を撫でた。


俺の前でこいつは泣いてばっかだ。


俺が泣かしてるのか…？



俺といなければ、
こいつはもっと、笑うのだろうか…


そう思うと、光瑠は胸がズキズキと痛んだ。



「…来客があったんですね…」


少し落ち着いた頃、真希が赤い目をして顔をあげた。

その瞳は大きく揺れて、とても不安に満ちていた。


「来客…？あぁ、関根か…、前の秘書の…」


「秘書……」


と真希は僅かに瞳を見開いてそう呟いた。


「廊下でぶつかったらしいな。気にしてたぞ。」



光瑠が真希の濡れた頬を親指を拭うと、真希は静かに俯いた。


「彼……目が見えないんですね…」



静かな声で真希が言う。



「あぁ、２ヶ月前、事故でな…」



自分があの日呼び出さなければ…



───────お蔭で恋に落ちました…



そうは言ってもやはり、
光瑠の罪悪感は拭えない。


「２ヶ月前っ…？」



真希は驚いたように顔を上げて大きく目を見開いた。