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近くて遠い

第3章 父の残したもの

「借りたものは返さなきゃ。そんなの当たり前だよね、おじょーちゃん?」


「っ…………」



何も言わない私に、加山が再びイライラした顔付きをする。


「持ってるんだろ!金!こんな肉だの卵だの買ってる暇があったら返しやがれ!!」


加山はそう大きな声で怒鳴ると脇に落ちた私のカバンを逆さにひっくり返した。


「やめてください!!!」


やっと声が出た時には、ジャラジャラパサパサと音をたててお金が床に散らばっていた。




「おぉおぉ、こんなに一万円札持ってるじゃ~ん。」


「触らないで!!」



落ちたお金を拾おうとする男の手を私はすばやく叩いた。


「てめぇっ!原田さんに何しやがる!」


加山は大声出すと、大きく振りかぶって私の頬を力強く殴った。


パンっ!!



あまりの力の強さに私の身は後ろへ投げ出された。



「ありゃまぁ、ごめんねぇうちの加山が…
せっかくかわいい顔なのにねぇ。でも、今のはおじょーちゃんが悪いんだよ?
おじょーちゃんはお金を借りてる身分なんだからねぇ。」



じわじわと痛む頬に
冷たく吐かれた言葉。



触られたくない…

カナメさんが、私に貸してくれた大切な大切なお金…


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