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近くて遠い

第29章 虚構の愛、真実の愛

「ご主人様が戻られるまで大分ありますもんねっ!」


「えっ…!」



見破られた…

私は恥ずかしくて自分の顔を手で覆った。


「はぁあっ…
あの出発時の熱いキスは本当に今思い出しても胸がじんわりしますぅ…」



「も、もういいから、何か仕事ちょうだいっ!」



うっとりした表情で胸を押さえる愛花ちゃんの肩を私は照れながら、軽く叩いた。


「帰りのキスもみんなが見てるところでお願いしますねっ!」



「んもぉっ!」


愛花ちゃんがあんまりからかうので、私は部屋を出て古畑さんを探そうとした。



「嫌だ、ちょっとからかっただけじゃないですかぁ。」


目をうるうるさせながら、私を見つめる愛花ちゃんを私はギロッと睨んだ。


そんな私の表情を見て愛花ちゃんは少し身体を強張らせた。


「仕事、あります!」



「もぉ、早く言ってよ…」


「今日ご主人様が戻られるので、書斎の掃除を頼まれてるんですけど…」


書斎…?

初めてここに来たときに光瑠さんに呼ばれた場所かな…?


「分かった、手伝うよ。」

愛花ちゃんは私の返事を聞くと、ありがとうございますと言って頭を下げた。


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