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近くて遠い

第29章 虚構の愛、真実の愛

「いつも思うんだけど、この家色々無駄に広すぎだよ…」


光瑠さんの書斎に入って、私は改めてそう思った。


「そうですかね?
もう慣れちゃいました。」

そんなことを言いながら、愛花ちゃんがほこりを叩く。



「この部屋だって十分綺麗なのに、無駄に広いからほこりが溜まる一方じゃない…」


私のぼやきに愛花ちゃんはそうですねーと適当に返事をした。


私はふっ、と息を吐いて部屋の掃除を始めた。


改めて部屋を見回すと、
すごく懐かしかった。


言うほど前ではないのに、もう何年も前にここに来たような気がする。



訳も分からず契約だと言われて、三千万で買われ、ここを訪れた。


隼人が光瑠さんの足に飛び付いて、早々に怒らせたっけ…



そんな事をぼんやり思いながら、私は光瑠さんの机を拭いていると、

何か紙が手に当たって、それが床にハラリと落ちた。



「あ、何か落ちましたよ。」


丁度こっちを見ていた愛花ちゃんが駆け寄ってきて、それを拾った。


「ごめんね。」



そう声を掛けると、

愛花ちゃんは、いえいえと言いながら、その紙を見つめた。



「あら、真希様の写真ですね。
きっとご主人様、たまに見てるんですよっ」




「え…?」


愛花ちゃんがまたからかうようにして私の方を見た。

写真…?

そんなもの撮ったっけ?



「見せて?」


私は愛花ちゃんから、その写真を受け取ってそれを見た。



「随分笑ってて素敵な写真ですね。」



と脇で愛花ちゃんが言った。


その写真を見て、
トクンと胸が鳴った。


確かに、
写真の中の少女は優しくこちらに微笑みかけていた。


けど…



「これ、
私じゃない……」




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