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近くて遠い

第29章 虚構の愛、真実の愛

「真希様……」


ポロポロと涙を流しながら、愛花ちゃんが私を見つめる。



「……大丈夫、だから、行って。」



乾いた笑いを見せた私に愛花ちゃんが手で顔を覆いながら、部屋を去っていった。



バタンと扉が閉まると、私は要さんを見つめた。



「何があったんですか…」


勘のいい彼はすぐに私の異変に気付いて声を掛ける。



「いえ、ちょっと…」



私が言葉を濁すと要さんがギュッと下唇を噛んだ。



「あなたは
僕に隠し事ばかりされますね…」



その言葉に
身体がビクンと動いた。


どういう意味だろう──


今日の要さんは何か覚悟したような神妙な面持ちだった。


「おっしゃっている意味が──」



「ある少女の、物語を聞いていただけますか?」



私の言葉を遮って、要さんが口を開いた。


物語……?


「えっ、ええ。なんでしょうか。」


私は濡れた頬を両手で拭って真剣な顔をする要さんを見た。


「あるところに、普通の少女がいたんです。
仮の名を……そうだな、

真希、にしましょう。」



ドキッと胸が鳴る。


「っ…」


彼は一体何をしたいのか──



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