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近くて遠い

第29章 虚構の愛、真実の愛

だって
私は光瑠さんを

信じているから…


いや、

信じて"いた"から…



「ここまで言ってもまだ何もおっしゃって下さらないのですね…」


要さんの顔が大きく歪む。

「そんなに社長が怖いですか?それとも本当に社長のことを…?」




私は辛くなって要さんから目をそらし、掴まれている手を懸命に離そうとした。


「っ…分かりました…
あなたが何も言わないのなら、


もう僕はあなたに関わらない…」


要さんはそう言って立ち上がった。


どうするのが正しいのだろう、


言わないで置こうと決めたのは、

光瑠さんを信じていたからなのに…



「うっ…ううっ…」


背中を向けて去ろうとする要さんを私は泣きながら見ていた。


「真希さん…」


クルりと要さんが振り返った。



黒髪の奥の瞳が切なく光る。



「これだけは


伝えたい。」




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