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近くて遠い

第30章 3つの想い

扉が開いた音に要と真希が身体を震わせた。



「真希だったのか──」


低く響いた声に絶望の色が混ざる。



「光瑠さんっ…」



「っ……」



要は真希を強く抱き締めたまま光瑠の声の方に顔を向けた。



あの日と同じ──


光瑠は、真希と要が纏う入り込めない雰囲気を感じていた。


部下の幸せを望んでいたはずなのに、


胸に溢れるのは、喜びではなく、裏切られたことに対する怒りだった。



こんなことは望んでいない──


真希も自分の帰りを待っていたはずだ…


なのに、
何故未だ別の男の腕の中にいるのか…



「社長っ…」




「っ…どういうつもりだっ!!」



光瑠は頭に血を上らせながら二人に近付いた。



「真希を離せ」


「──それはできません。」



はっきりと歯向かった要に光瑠は大きく目を見開いた。


そして、あぁ、と声をだして泣く真希を見つめる。


嫉妬の炎が


ジリジリと光瑠の胸を焼く。




「真希っ!俺だ!こっちに来い!」




そう怒鳴っても真希は要の腕の中で泣いたまま、光瑠を見ることすらしなかった。


「っ…真希っ!!!!!」


より一層言葉を強めて、光瑠は乱暴に要から真希を離そうとした。



「っ…そうやって!!
そうやって、あなたは乱暴に真希さんを自分のものにしようとしたんですかっ!」

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