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近くて遠い

第35章 現在と過去

「真希さん、」




隼人が遠くに駆け出したのをみて、要さんがミニカーをリュックにしまいながら、私に声を掛けた。




「すみませんっ…」



要さんの前で

私は泣いてばかりだ。


なのに

堪えようとしても胸が苦しくてどうにもならなかった。



「………僕は、

余計な事をしたんでしょうか…」





背中を向けたまま、
要さんが呟いた。



余計な事…



それが何をさすのか私にはよく分からなかった。



「僕こそ、

あなたの優しさに漬け込んだのかもしれない…」



要さんはミニカーを仕舞い終え、振り返って私を見た。



「要さんっ…」



「真希さんっ……


目が見えなかった僕に……


あなたは同情しただけですか…?」




この言葉に


私は目を見開いた。



「違いますっ……

同情なんかじゃありません…!!

私はあの時にあなたに助けてもらってっ……

とても救われて…!


初めてっ……

初めて人を好きになったんです…!!」



要さんが私の肩を持って顔を覗き込んだ。



「きっと、


それは真実なんでしょう…



だけど…







今は………?」




身体が固まった。





え……?


今……?


今の私の気持ちは……?

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