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近くて遠い

第38章 大事なもの

乗り込んだ車の中で


光瑠、要、酒田はタブレットに映る真希を見ていた。


何か薬を飲まされたのか、ずっと頭を垂れたまま動かない。



「何もかも、簡単に逆探知が出来すぎているっ……」



「それはどういう意味だっ!罠ということかっ!」



要の言葉に光瑠が質問すると、


それならまだマシです───


と言った。



不穏な空気が車内にたちこめる。



「確かにこれじゃああまりに無計画だ。
仲間がいる様子もなく、身代金要求もない…。
まるで捕まってもいいと思っての犯行のように──」



酒田がいいながら、はっと息を飲んだ。


「なにか要求があるわけでもなく、

こんな無謀なことをするということは…

本気のバカか…


相当な恨みでただただ
真希さんを殺す気でいるかの

どちらかだっ……」



要が身体震わせながら言った。




「っ!!
何故だ!!!何故真希なんだ!!!」



焦る光瑠の隣で

僕のせいだ───


と酒田が呟いた。




「どういうことだっ!!」


要が酒田の胸ぐらを掴んで叫んだ。





「わっ、渡辺代表が契約確認に来られた日っ…
社長が荒れている理由を社員と話して…

真希さんの名前を出しっ……
『大事にされていたから無理もない』とっ…


そう話したのを聞かれたんだと思いますっ…」



その言葉を聞いて、


光瑠と要は脱力した。



動画に添えられた


『大事なものを失う気持ちを知れ』


の言葉の意味────


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