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近くて遠い

第44章 根源

「それとこれとは全く別の話だっ!」



「どうしてっ!?」



「別に俺はそんなつもりで話してた訳じゃ──」



「私だってそうですっ!!」



激しく言い合って、
私と光瑠さんが息を切らしながら、睨み合っていると、
ハハハハハと拓也さんが笑う声がして私と光瑠さんはキッと拓也さんに顔を向けた。



「いやいや、そんな二人とも睨まないで下さいよ。」


お腹を抱える拓也さんを私は少し不服そうに見た。




「なんだ、お前っ…」



光瑠さんもムカついた様子で拓也さんを見ていた。



「幸せそうで何よりです…」


笑いで溢した涙を拭いながら拓也さんが言う。


私と光瑠さんは顔を見合わせると、すぐにフンッとお互い顔を背けた。



「有川様…」



拓也さんが光瑠さんに微笑みながら、話し掛ける。



「なんだ」



いつも以上に低い声で光瑠さんが言葉を返した。



「確かに、桜子はかわいいですけど…」



かわいいと言われた瞬間、光瑠さんの私の腕を掴む力が強まった。



「さすがに、二回り近く年の離れた子は恋愛対象にはなりませんよ。」



ニコッと拓也さんが笑ったと同時に、


えっ!?



と私と光瑠さんは固まった。



ヒゲを生やしていて、
だけど童顔だから年齢不詳で…


勝手に20代後半くらい?とか思ってたけどっ…



「お前一体いくつなんだっ!?」


光瑠さんも驚いた様子で拓也さんに尋ねた。



「僕ですか?

今年で38です。」




「「38っ!?」」




異口同音した私と光瑠さんを見て、拓也さんが少し項垂れた。



「やっぱり、ヒゲを生やしてもその童顔はどうにもならないようね」


後ろから
幸ママがフフっと笑いながら言った。



「そんなぁ……」



落ち込む拓也さんを見て、店中が笑いに満ちる中、
私と光瑠さんだけ信じられない…と思いながら、言葉を失っていた。




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