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近くて遠い

第8章 助けと契約

一瞬でも
助けてくれた
などと思ってしまったことが情けなかった。



結局彼も、
原田と言っていることは変わらない…



気に入ったから買う?



私だって同じ人間なのに…



「バカにしないでください!!」



あまりの怒りに私は有川様の胸を勢いよく押し放した。



突然のことで驚いたのか、有川様はグッと後ろによろけて私を見た。



「気に入ったから買う?

そんな侮辱耐えられません!!

何でもかんでもお金で買えると思ったら大間違いだわ!!!」


勢いよく話したせいで、息が上がっていた。

もう二度と接待なんかするか!

そう凄んで私が部屋を出ていこうとした、

そのとき、



ふっ


と、背後で、有川様が鼻で笑ったのが聞こえた。




この期に及んでまだ…!



そう思って私が再び振り返った。



「何度もいうが、お前に選択の余地はない。」



「っ…いいえ、お断りします!」


自信に溢れた有川様に強気で私は言い返した。



「そんなこと言っていいのか?」


ニヤリと有川様の口角が上がる。


なに……?


一体何があると言うの…?


警戒し、固まる私を見ながら有川様はゆっくりとソファーに腰を下ろした。



「お前が抱えているのは三千万の借金だけじゃないだろう?

これは契約だ。


もし承諾するなら、

お前の母親の治療費も…


いやそれだけじゃない、


名医を専属の医師としてつけて全力でサポートしよう。」



残酷な悪魔は

不敵な笑みを浮かべながら、卑怯な切り札を出した。


目を見開き、固まる私を見て有川様は勝ち誇った顔をする。



「1日だけ答えを待ってやろう。

まぁ、お前に選択の余地はないがな。」



それだけ言い残すと、


有川様は高笑いして、VIPルームから華麗に去っていった。

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