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近くて遠い

第9章 夢と現実

ザー……



誰もいないその道に雨の音だけが響く。


お母さんにバレないように、無理矢理にメイクを落としたせいで目元がヒリヒリした。



なにやってんだろ私…





好きだった雨も


今じゃ私にはかない想いをいたずらに助長させるだけ。




雨に打たれながら、

自分にバカじゃないの、と言い聞かせても、

それでもまだ心の何処かで期待してる。



────また君に会えるってことだろ…?




会いたい



助けて…




「カナメさん…」



強まる雨の中、私は一人泣きながらそう呟いて、地面に膝をついた。



その時だった




え……………?




強まる雨の中で



長身の傘をさした人物が


私の前方から歩いてくるのが見えた。




まさか……




ドクンと心臓がなり、


涙が止まった。




ゆっくりと
近付いてくるその人影に私は目を奪われた。





傘のせいで、よく顔が見えない




もどかしく思いながらも、あまりに大きい期待と不安で身体を動かすことすらできない。




激しい雨音が、


その人の足音すらもかき消してしまう。

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