
私の掏明くん
第23章 嬉しいけど悲しい
千尋「…忘れたい」
掏明と過ごした日々
本当は忘れたくなんかない
だけど辛くて悲しくて毎日泣いてばかり
いた千尋
こんなに悲しいなら忘れてしまいたい
掏明と出会う前に戻りたいと
そう思い始めていた
千尋「…グスッ」
泣いていたが
いくら泣いても問題は解決しない
だったら今、自分にやれる最低限の事を
やってみようと思い
千尋は
迷惑を承知で
東矢の家を訪ねる事にした
数日後…
貴子「千尋さん、お待ちしてました」
千尋「…お久しぶりです」
貴子の顔を見ると
意思が揺らぎそうだったが
胸元のネックレスをギュッと握り覚悟を
決めた
千尋「…?」
東矢「あっ川澄さん、こんにちは」
千尋「…こんにちは」
自分の事を
千尋ではなく川澄と呼び
その左手薬指にはシンプルな結婚指輪が
キラリと
輝いていた
千尋「…」
