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不器用なタッシュ

第10章 鎖

ドクン…ドクン…


胸が異様に落ち着かない。


香織の何か言いたげな顔に、俺は捲し立てる様に次々と話を続けていく。


「ツアーじゃなきゃ、航空チケットも安く押さえられるしさ」


「嘉之…あのさ…」


意を決した様に、香織が口を開いたが


「香織、アッピア街道とか、ポンペイ行きたい言ってただろ。あとさ、アルベロベッロとかも見とけば~!」


「……うん…」


押さえ込んだ!
まっ…楽勝だな!


それから俺は、イタリアでの活動の構想とかも話していった。


香織は少しもの悲し気だったけど、俺の話しを頷いて聞いてくれていた。


話しがひと段落すると


「じゃあ…もう帰ろうか…」


香織は席を立ち帰ろうとしていたから…


「店、回らないの?」


「えっ!見るの?」


「見たかったんだろ?」


別にどっちでもいいけどな…
帰るなら部屋に連れ込むだけだし…。


でも、香織と買い物で見て回るなんて恋人らしい事した事なかったから、これからはこういう事も必要なんだろうとも思えた。


そうだ…俺が香織の『彼氏』なんだから…。


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