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不器用なタッシュ

第10章 鎖

「香…」


名前を呼び掛けると、香織は逃げる様に部屋を出て行った。


バッタンッ!


何が…起きた?


香織は…何処に行ったんだ?


目の前の現実を理性も本能も、俺の全てが否定する。


「香…織……?…香織……」


瞬間…


ガッシャンッ!


足で思いっきりテーブルを蹴飛ばすと、グラスが割れて溶け掛けの氷が床を滑っていった。


「はぁ…はぁ…悪いのは……あの男だ……」


俺と香織は6年間…
色んな事を『一緒』に乗り越えてきたのに…


あの小田切が、香織を誑かしたんだ…。


無意識に指輪に手を伸ばす。


「あぁ…忘れて…行ったんだ…届けないと…」


手のひらに握った指輪に、香織を絶対イタリアに連れて行くと誓った…。

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