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不器用なタッシュ

第11章 執念

金曜日

香織の様子からすると、毎週金曜日は小田切と会っている事が予測出来た。


香織が帰って来そうな時間から、小田切のマンションの前に車を止めて張り込む。


怪しげな感じで見て行く奴も居たが、そんなの気にもしなかった。


高級そうな分譲マンション。


小田切は、それなりに安定した収入があるんだろう。


それだけで俺には、分が悪い。


コンテストに入賞して、香織の会社の企画で、そこそこ給料も入るけど、マンションだってトランスが借りてくれている。


イタリアだってトランスに頼りだ。


俺にはまだ確固たる『安定』は手に入ってなかった。


だから尚更、香織を失ったら…

俺には感情を叩き付けるだけの筆しか残らない。


せめて見てくれぐらい馬鹿にされない様に、普段着慣れないスーツまで着てきた。


そして…しばらくすると…


「ビンゴ…」


案の定、香織と小田切がスーパーの袋をぶら下げて、満面の笑顔で帰って来た。


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