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不器用なタッシュ

第11章 執念

「嘉之…」


辛そうな声で、香織が名前を読んだ。


その声は…

『後悔』?

『謝罪』?


『憐れみ』か…


全部だったとしても…

そんなの関係ねぇ…。


「香織っ!」


「な…に…」


大好きなアーモンド型の瞳に…
恐怖が浮かぶ…。


一気に色んな感情が吹き出してきて、マーブルに混ざり合い…

ダークグレーに俺を覆い尽くす。


息苦しくて…
堪らない…。


「俺は…認めてねーからな…」


強がって見たものの…
振り向いて香織を見るのが怖かった。


鬱陶しいくらい伸びた前髪で、表情を隠しながら一言を言い捨て車に乗り込み、直ぐ様エンジンを掛けてアクセルをめいいっぱい踏み込んだ。


「クッソ…クッソ…あの野郎…」


怒り任せに、このまま壁にでも突っ込みたくなった。


でも…

そんな勇気も持ち合わせていない自分が…


一番情けなかった…。

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