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不器用なタッシュ

第12章 時限爆弾設置

ウィーン――――。


高速エレベーターは静かな物音で降下していく。


ガラス張りの箱の中から見る景色は、ネオンの光で地上の星みたいに輝いていた。


きっと何もなかったら…

香織は無邪気にこの風景を喜んだだろうな。


『嘉之さん!月が綺麗ですよ!』


初めて結ばれた日の香織の無邪気な笑顔が蘇る――――


『どこからでも同じモノが見えるって、素敵ですよね?』


『なんか…離れてても同じもの見れてたら、心は繋がってそうな気がして。月だけじゃなくて…理想や夢も。身体は違えど、同じ夢描けたら、心は繋がっていられるのかもって…』



君は少し照れながら…

でも嬉しそうに語っていたよね。


あの時の言葉を俺はずっと信じていたんだ――――。



だけど今は、俺を見詰める君の瞳には哀しみしかない。



未来に向かって煌めくビルの光に、嫌悪感で目を細める。



支配する悦びと、拒否をさられる虚しさが――――

胸の中で激しく渦巻いていった。

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