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不器用なタッシュ

第13章 奪回

香織の住んでいるアパートまで車を走らせている間に、互い終始無言だった。


話し掛けたところで返事が返ってくるとは思わなかったから、俺も敢えて喋ろうとはしなかった。


ニュービートルをアパート客用の駐車場に停車させる。


力なくシートに凭れている香織は、車から降りられるかも微妙な雰囲気だ。


「着いたけど、部屋まで送る?」


「大丈夫…」


本当は起きているのもしんどいだろうに、気丈に俺の助けを断る。


そんな香織に駄目押しのように俺は


「香織…今日は本当に楽しかったよ…」


甘目の声で囁いて、香織の唇に軽く触れるだけのキスした。


香織はしっかり目を閉じて、抵抗することなくキスを受けているが、微かに震えているのが分かった。


諦めなのか、怒らせないようにか…

明らかに怯えている。


それでいて、俺を拒絶するんだろ?


この震えが止まるまでずっとこうしていてやろうか――――


とさえ思った。



「また連絡する…」


かなり長いこと重ねた唇を離しながらそう言うと、香織は儚げに微笑んだ。


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