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不器用なタッシュ

第13章 奪回

パッタン――――


車を降りた香織は精一杯の早足でアパートに向かって行く。


香織の弱々しいながらも、俺を拒絶している背中を力付くでも引き戻してやりたい。


胸の奥が傷が膿んだように疼く。


ついさっきまで何時間も何回も抱いていたのに、俺に残されたのは虚無感だけだった。


「クッソ……」


行き場のない虚しを打ち消したくて、アクセル全開で壁に突っ込んでやりたくなる。


ハンドルの上に腕を重ねて頭を伏せて、奥歯を噛む。


ほんの数秒そのままの体勢でジッとしていた。


胸焼けみたいなムカつきが収まると、ゆっくり顔を上げて細めた目でフロントを真っ直ぐ見据える。


「行くか…」


エンジンキーを回して静かに車を発進させ、別の場所に移動を始めた。


身体の中から染めようとした俺のものを拭って…

香織は帰ろうとするんだ――――


あの男の元へ。



そして案の定、数時間後には小田切のマンションに戻ってきた香織を俺は――――


車の中から見届けた。


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