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不器用なタッシュ

第13章 奪回

チャラチャラ~!


携帯の着信が鳴りやがった。


催眠術が解けたかのように香織は我に返り、携帯を確認すると安堵感を浮かべたながらも切ない気な顔をする。


小田切だろ――――。


着信音は中々切れない。


香織は伺う目付きで俺を見てきたから、俺は口元に薄ら笑いを浮かべて


「『小田切さん』だろ? 出れば…」


通話を許した俺に、一瞬怪訝な顔をして、香織は小田切からの電話に出た。


「お…小田切さん」


『香織ん?待ち合わせ時間に来ないから、また何かあったかと思って…大丈夫?』


「うん…少し遅れるけど、もうすぐ行くから…」


微かに聞こえてくる小田切の声。


無意識でも胸奥に黒いシミが浮かび上がってムカつく。


だけど表情を変えずに背凭れに寄りかかって、香織を眺めていた。


香織は俺の方をチラ見して、小田切と両方に気を使っている。


「じゃ…」


『香織ん…もしかして、嘉之?』


「…うん…。でも大丈夫だから…」


『香織ん!今どこ!?』


「アパートだから、すぐ行くね」


『迎えに行くっ!』


小田切の必死な声に、香織は泣きそうな顔を見せた。


イライラする――――。


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