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不器用なタッシュ

第17章 強行突破

目を瞑り眉間に皺を寄せている香織を見下ろしながら、心の中で囁く――――。


香織――――お前は何も考えずに、大人しく俺に付いて来れば良いんだよ。


少しして、絞り出すような声で香織が言葉を発してきた。


「私……行かないわよ。仕事だってあるのに」

「しばらく休み扱いにしとけば。有給あるだろ」

「勝手に決めないでよ! きゃあ!」

「何でも言うこと、訊くんじゃなかったの……」


この期に及んでまだ反抗してくる香織の手首を片手で押さえつけ、小田切の写真を頬に宛がった。


その意味を察した香織は、涙目で訴えかけてくる。


「あっ……小田切さんを巻き込むのは止めてよ。こんなことして、嘉之だって犯罪になるよ……」

「ふん! そんなヘマするかよ」


これくらいのことで、犯罪扱いに出来る訳ない。


もし俺を犯罪者扱いにしようものなら、香織の会社にだって弊害が出るし、香織自身も立場が悪くなる。

誰よりもそれを小田切が望まないだろうだろう――――。


怖気ない俺に香織は何かを察したのか、押さえつけられていた手から力を抜いた。


「好きにすれば、いいわ……」


完全試合だ――――香織は負けを認めて、やっと降参した。


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