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不器用なタッシュ

第17章 強行突破

「嘉之……」


戸惑っている香織の顔を視覚が捉えるが、俺の感情の激流はそれを無視して暴走する。


吹き上がってくる激情のまま、香織に吐き出してぶつけていく。


「ずっと応援してくれてたじゃないかっ! 同じ夢描くんじゃなかったのかよ!」

「あ……」

「ずっと見ててくれるって……香織だけは、見ててくれると信じていたのにっ!」


授賞式の夜――――俺たちがやっと結ばれた日。


君は言ってくれたじゃないか――――

『なんか……離れてても同じもの見れてたら、心は繋がってそうな気がして。月だけじゃなくて理想や夢も。身体は違えど同じ夢描けたら、心は繋がっていられるのかもって……』

離れていても――――
繋がっていられるって――――

『嘉之さんが描いてる夢……少しくらい同じ夢、描けられたら……いいな……』

同じ理想と夢を――――
描きたいって――――

そう言ってくれた君の言葉を俺はずっと信じていたのに――――!!


「嘘……」


でも香織は、俺の胸の内の想いが信じられないようだった。


「嘘……じゃあ、何で気持ち試すようなことしたのよ!」

ここまで言っても否定された上に、『試す』って訳わからねぇだろ!

「してねぇよ!」

「元木さんのことだって、私納得出来なかった!」

何でここで、兄貴の嫁がでてくんだよ!

「元木は関係ないだろ!」

「あるわぁ! だいたい昔どんだけフラれたか知らないけど、何で『好き』の一言も言えないのよ!」


元木のことをもっと言ってくるかと思ったが、いきなり香織は俺の『トラウマ』に踏み込んできやがった。

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