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不器用なタッシュ

第18章 旅立ち

国際線の空港――――俺はこれから、イタリアに発つ。


頭をぶつけた所は傷はなかったが、まだ鈍い痛みが残っている。


「気を付けてな。イタリアでは無茶すんなよ……嘉之」

「……わざわざ見送りなんか来なくても良かったのに……安岡」


『恋人』も失い、友達も少ない、家族も来れない俺の旅立ちに安岡だけがやってきた。


「違うわ! 見送りじゃなくて見届けに来たんだよ。お前がちゃんとイタリアに行ったこと、香織ちゃんに報告してやらないと安心して新しいスタートきれないだろ!」


意地の悪い言い方をして、揶揄ってくる安岡の笑顔は、学生時代から変わらない笑顔だった。


「そっか……香織のこと、頼むよ……」

「へぇ~珍しく殊勝な心掛けじゃないか。もっと早く……て、今更言ってもだな」

「お前、いちいち傷を抉る言い方すんなよ」

「はは! ちゃんと傷付いていたか! 忘れんなよな、その痛み」

「……あぁ」

「香織ちゃんなら大丈夫だよ。新しい恋人が、大事にしてくれるさ」


『あぁそうだな……』――――なんて昨日の今日で、今の俺にはまだ言えない


口を噤んでいると、安岡は周りをキョロキョロと見渡していた。

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