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不器用なタッシュ

第4章 シエロ

「わっ!」


へっ?何だ!


ただお礼を言っただけなんだが、彼女は真っ赤になっていた。


俺…何かしたか?


「あ…あの~厚かましいかもなんですが、ポストカードの裏に…サインして貰ってもいいですか…。」


語尾は聞き取り難いくらい、声が小さくなっていく。


サイン?俺のなんか欲しいの?


「あ~いいっすけど…サインなんて、決めちゃいないから普通に名前書くだけでいないかな?」


「は、はい!全然、それでお構い無く!」


真面目なのかな?
妙に体育系なノリだけど。


「じゃ…どれに書けばいい?」


彼女は迷わず


「これでっ!」


出してきたのは


「シエロだね…解った。」


この時は、単なる偶然にしか思わなかった。


俺の本質なんて、俺自身でもまだ解らなかったから…。


渡辺香織…彼女の色が、この時シエロの染みの様に、鮮やか一滴落とされていった。


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