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身代わり妹

第11章 疑心

ガチャッ

真っ暗な寝室。


─────ここにも…居ない……


そう思い、ドアを閉めようとすると……


「…っ……っ……‼︎」


─────…?

押し殺したような…泣き声……?



パチ……灯りを点ける。

美優の姿を見つけ、ホッとため息が漏れた。


「……美優?」

小刻みに肩を震わせ、床に蹲ったままの美優。


「美優⁉︎ どうした? お腹痛いのか⁈ 」

慌てて美優に駆け寄る。


ガシッと、震えるその肩に手を置けば、美優がゆっくりと顔を上げる。


「……っ‼︎」

涙で濡れる美優の顔。

俺の顔を見て、美優の泣き顔が更に歪む。


そして、ガバっと俺に抱き着いてきた。



「ごめんっ……出産費用っ…失くした……」

俺の胸に顔を埋め、嗚咽しながら美優が言った。


「出産費用?」

「……っ……」

俺が聞き返せば、美優は更にキツく抱き付いて嗚咽する。


「……誰か……来てた?」


ビクッと美優の肩が震える。

美優の背中に回していた手を上げ、美優の頭を優しく撫でる。


「ん……お母さん……」

消え入りそうな小さな声で、美優がそう言った。




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