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身代わり妹

第11章 疑心

<side 美優>


凌太の胸の中で、子供みたいに泣きじゃくった。


泣き止んでも、まだしばらくはひっくひっくと余韻が残る。



恥ずかしい……。

こんなに大泣きしちゃった事も、

実の母親に…通帳を盗られた事も……


(恥ずかしくて顔が上げられない……)

私は今だ凌太に抱き着いたままいた。



ドクンドクン……

規則正しい凌太の心音。

力強いその音に、私の心はすっかり落ち着いていた。





「あ……っ!」

身体が大きく跳ね、慌ててお腹を押さえた。


「どうした?」

心配顔で覗き込む凌太。



「……動いたっ」

泣き顔なのも忘れて、私は嬉しくて微笑む。


「え? どこ?」

大きく見開いた凌太の瞳。


「ここ!」

凌太の手を取り、自分のお腹に当てる。


─────…


「……わかんねぇ……」


もにょもにょっという小さな動き。

凌太にはまだ伝わらないみたい。



「まだ私にしかわかんないのかも」

先生も最初は私にしかわからないって言ってたっけ。


「えー! ずりー! 動けー!」

お腹に口を付け、叫ぶ凌太。



あんなに悲しい事があったのに、

私はもう、お腹を抱えて笑っていた。


(大丈夫……ママ負けないから)

抱えたお腹に、そっと優しく触れた。



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