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てるてる坊主

第1章 一

どれくらいそうしていたのか、外から悲鳴が聞こえた。

僕は吃驚して下を覗くと、隣のおばさんが"てるてる坊主"を見ている。

おばさんは"てるてる坊主"が怖いのかなと僕は思った。

僕はその様子を自分の部屋から見ていた。

おばさんの悲鳴を聞いて人が集まってきた。

皆そんなに"てるてる坊主"が珍しいのかな?

僕がぼんやりとそんなことを思っていると、今度はパトカーがきた。
その時になって僕はおかしいと思った。

下ではたくさん人が集まり騒いでいる。

僕も気になったので、下に降りてみることにした。

玄関を出ると大人達が僕を見た。

驚いた顔。

悲しそうな顔。

憐れむような顔。

どうしてそんな顔で僕を見るのだろう。

子供の僕には不思議で仕方なかった。

今なら、その理由がわかる。

僕は母親に自殺され、何も知らないまま母を待ち続ける子供だと思われたのだろう。

だから僕は同情された。

可哀想な子供だと思われた。

でも僕は可哀想でもなければ、母の帰りを待つ健気な子供でもない。
何故なら、僕は知っていたからだ。

あれが母だと。

母から僕へのプレゼントだと。

そう思っていた。

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