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素直になれるか?

第1章 こんなはずじゃ…

「待てって」

腕を取られ、そのまま後ろから抱きつかれた。





「加瀬宮。答えを聞けよ」

絞り出すようなくぐもった声が、俺の一切の抵抗を阻んだ。



「迷ってた。前途あるお前を俺に縛り付けることが、いいのか悪いのか…俺の私情がお前の、足枷になるのが怖い。諦めようとも思った。でも、無理だ。今更お前を…手放すことなんか、できない。だから…」


なんだかよく理解できていない。

「課長?それって、つまりは、俺の事好きって事ですか?」

顔が見たいなぁと思った。
後ろから抱きしめられていて、それが叶わない。

「好きだ、お前が」





気がついたら、俺は課長の腕を振り払っていた。
振り返り、課長の顎を持ち上げてその表情を晒した。
まっすぐな目が俺を見ている。

大きな目が瞬きもせずに、口元は引き結んで、言葉が真実であると証明している。

「ウソだったら押し倒しますよ?」

「ウソじゃない。けど」



「けど、なんです?」





「…ウソじゃなけりゃ、押し倒さないのか?」



俺、この人に一生勝てないな。
ちくしょう!


噛み付く勢いで、唇を重ねた。

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