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素直になれるか?

第1章 こんなはずじゃ…

キスまでして、抱きしめて、想いが通じたんだと浮かれていた俺がアホなのか。

内海課長をかばって暴走バイクと衝突して、それがきっかけで彼を捕まえられた。

はずだったのに。


久しぶりに出社して見たら、内海課長の態度は以前のそれとなんら変わることなく。
むしろ少し厳しくなった印象すら受ける。

そして、俺と目が合わない。
話している時も、仕事の指示を出す時も、廊下ですれ違った時も。
俺がどんなにガン見しても、課長は作ったような不自然な笑顔を顔に貼り付け、視線を向けては来なかった。


なんなんだ?
照れているのか…
それとも仕事とプライベートは完全に別と割り切っているのか…

真意が全く分からない。
確かに周囲にバレるとお互いまずいのは承知しているが。


そこまで考えて、今更ながら思い当たる。

あの人はあれから一度も見舞いに来なかった。




渡されたファイルを机に放り投げ、盛大にため息をついた。

俺が思い描いていた課長とのオフィスラブは、もっと秘密めいた甘いものだったんだけどなぁ。



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