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開花

第1章 ―

 学校での授業が終わって、家に帰ってきましたら、玄関扉の前で、大きな赤茶色のカエルがうつぶせになって眠っているのに出くわしました。

 まるで門番みたいに、顔を外に向けていたのです。

 カエルの背中にはイボのようなぶつぶつとした小さな突起があり、しかもそのところどころ黒ずんだ肌はぬるぬるとしていて、すっごく気持ちの悪いものでした。

 わたしは気の強いほうでしたが、気の弱い子だったら、たぶん近づくことができなかったでしょう。

 後ろの肢は太く、たたむようにしており、前の肢は、その指がひょろひょろと細くて、しかも先端だけは、ぷっくらと丸くなっていました。

 目は開いていたはずなのですが、じっと前のほうだけを見つめて、ぴくりとも動きません。

 死んだように、頑なに固まっていたのです。

 まったく、なんていやらしいカエルなのでしょうか、人の家のポーチを、ベッドか何かと勘違いしていたのです。

 わたしは右足を上げて、カエルを踏み潰してやろうと思いました。

 空色の靴が汚れてしまうのは嫌でしたが、その醜いカエルを視界に住ませておくのは、それ以上に嫌だったのです。

 足の影に、カエルの赤茶色の胴体全体をすっぽりと覆い隠されました。

 なんとその時です。

 動かなかったはずのカエルがぎょろりと眼球を動かして、わたしのことを見上げました。

 カエルは自分が今にも踏み潰されそうになっていることに気がつくと、大慌てで、ぴょんぴょん跳びはね、わたしの股の間をくぐり抜けてしまいました。

 わたしが後ろを振り向いた時、カエルの姿はもうどこにもありませんでした。

 どんくさそうな見た目をしていますが、なかなかどうしてすばしっこいやつなのです。

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