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開花

第1章 ―

 お母さんはなんだか聞き取ることのできない声をあげながら、洗濯機の上に置いてあった雑巾を手に持って、わたしの背中をごしごしとふいてくれました。

 わたしはもう大泣きで、何も言えませんでした。

 ただたださめざめと泣いて、顔を手で隠していました。

 はい、もう大丈夫よ。

 お母さんがいくぶんひきつった様子でそう声をかけてくれたので、わたしはおそるおそる手を顔から放しました。

 そしてもう卵が残っていないかと、再度背中を確認してみたのですが、そこでとんでもないものを目撃してしまいました。

 なんと、すっかりと肌色をのぞかせたはずの背中から、ぽつりぽつりと、白い粒々が浮き出てきたのです。

 白い粒の中では、黒い点がもぞもぞと踊っていました。

 わたしの頭が真っ白になって、お母さんが倒れてしまったということは、ここに記すまでもないでしょう。

 オタマジャクシ達は水のない床で、いつまでもいつまでも、ぴちぴちとはね続けているのでした。
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