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やっと、やっと…

第17章 本当の初めて


ぎゅっと強く抱きしめられ
時間が止まったように静かな時間が流れる





「唯…」



低く甘く、優しい声で囁く






「……ん、なぁに…?」







胸が煩いくらいに高鳴っている


私のものではない温かく強い鼓動も伝わってきた




(智己の胸が、熱いよ…)







あれから8年、さらに逞しくなった熱い胸に抱かれ、
シャンプーとボディソープの香りに包まれ眩暈すらしていた







ソファに座っていた私を引き上げるように抱きしめ、首元に顔を埋めながら智己は囁く







「もう我慢できそうにないんだよ…」






甘く掠れた声に、体の深いところがズクンと震えた









緊張なのか、期待なのか、喉が締め付けられ声も出ず、
私はただコクンと頷いた









ゆっくりと腕の力を弱め私を解放すると
頬を優しく撫でた


その手は首、肩、腕を優しく撫で下ろす





くすぐったくも優しく触れるその手に
愛おしさが溢れてくる









「…ずっと、ずっとこうしたかった…」








切なく眉をひそめ、苦しそうに微笑んだ



その言葉、表情にグッと胸が締め付けられ
涙が自然と溢れ出る



空白の8年間
互いを思い合い、互いに気持ちを抑え込んだ結果
生まれた空白の時間

その時間の重みが、2人を余計に強く繋いだ




智己は何も言わず、微笑み、頬に優しく唇を触れた





もう一度私を見つめ











「唯、大好きだよ


これからもずっと愛してる」







そう言って今度は唇へ、
優しいキスをした




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