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やっと、やっと…

第1章 事の始まり

ある日の学校からの帰り道…

付き合い始めてから何回か
一緒に帰ったことはあるのに、
圭介くんは今だに緊張気味

恥ずかしがり屋なんだと思うと
少し可愛くて…

「ふふっ…」

思わず笑ってしまう

「どうしたの?いきなり」

圭介くんは驚いて私を見る

「いやぁ、ちょっとねぇ…」

私がからかうように言うと

「こら!教えろ〜!!」

帰り道なのに笑ながらじゃれあう二人
周りから見たら幸せそうなカップル

「圭介くんってシャイなの?」

「べつにっそんなことないから!」

そう言ってるそばから
頬を赤らめてそっぽを向く

「やっぱり、かわいい…」

そんな圭介くんの仕草に
ついつい口から出てしまった
その言葉には圭介くんは気づいていないようだ


気がつくと、今日はいつもと違う道を通っていた
ほとんど人通りのない暗い小道

「あれ?圭介くん?
いつもこっちじゃないよね?」


………



「あのさ、唯」

少しためらって
それからなにかを決心したかの様に
圭介くんは言った

「俺のこと、圭介って呼んで、
付き合ってるんだし…

……あと、」


グイっ

私の手首を掴み
自分に引き寄せる

次の瞬間私は、彼の腕の中に居た

ギュッ

圭介くんは野球部で体格が良い
小柄な私の体は
彼に、簡単に、包まれてしまう

咄嗟のことに私は驚いていた

「い、いきなりどうしたの…?」

「だってさっき、唯が俺のこと可愛いって…」


(あっ…聞こえてたんだ)


「俺、男だよ?わかってる?唯の彼氏なんだよ?」


圭介くんの心臓の音が
私にもわかるぐらい高鳴っている


「うん…分かってるよ」

こんなに大きな背中に
強く抱きしめられれば
誰だってそんなこと痛いぐらいにわかる

私の心臓も彼と同じようにうるさく鳴っていた


「唯、俺の名前呼んで…」

彼は低い切ない声で言う


「け、けい…すけ…くん?」


「違うよ、ちゃんと言って」



「…っ、けい、圭介…」

トクンっ

彼の心臓がまた大きく鳴った

さっきよりも、強く
抱きしめる腕に、力がこもる


「唯… 唯、好きだよ」


「うん、私も…好きだよ」


「唯、唯っ…」


圭介はそう何度も私の名前を呼んで
私の唇に自分の唇を重ねた

柔らかい温かさに包まれる


私と圭介の
初めてのキスだった



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