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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第3章 春の夢 参

 お須万も素直に頷き、良人に手を引かれて家に戻る。毎夜、そんなことの繰り返しだった。時には慎太郎の姿を求めて、探し疲れたお須万を背負い、東の空が白み始める頃に漸く帰ってくる日さえあった。
 それでも、慎之助は何も言わず、お須万に付き添った。慎之助が倒れたのは、寒い冬の夜にお須万と共に町を歩いて風邪を引いたのがきっかけであった。
「―」
 清七は言葉を失った。

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