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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第3章 春の夢 参

 お須万の話から、今初めて明らかになった真実があった。
 亡くした赤児の泣き声が聞こえると夜通し町をさまよい歩く女房と、その女房の身を案じて、ずっと一緒に町を歩いてやる良人。そこには愛盛りの伜を突如として失った若い夫婦の哀しい姿があった。
 そして、その慎之助とお須万夫婦が背負った悲嘆は、かつておみのと太助をあいついで失くした清七自身の味わった哀しみでもあった。

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