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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第3章 春の夢 参

 そう言いながら、お須万は片手でそっと愛おしげに膨らんだ腹を押さえた。恐らく、それは無意識の中の仕草であったろう。
「腹の子のお陰か? 赤ン坊ができて、また、新しくやり直そうっていう気になったか?」
 清七の指摘に、お須万がハッとした顔で腹部から手を放した。
「おい、もう一度訊く。その赤ン坊の父親はどこのどいつだ?」
 にじり寄る清七の見幕に気圧されたのか、お須万が恐怖に顔を引きつらせ後ろへと退(ひ)く。

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