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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第3章 春の夢 参

「あ―」
 お須万は再び顔色を失っていた。
「その赤ン坊は俺の―」
 そこまで言いかけた清七に向かって、お須万がもう一度両手をつき、頭を地面にすりつけた。
「お願いです、どうか何も言わないで下さい。黙って何も見なかったことにして、このままもう私のことは忘れて下さいませんか」
 お須万は懐から小さな巾着を取り出すと、その巾着ごと両手で差し出した。

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