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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第4章 春の夢 四

 わずか二年の間に主人が相次いで亡くなるという、ついぞ例のない不幸に襲われた伊勢屋のゆく末を危ぶむ声も多かった。
 何しろ残されたのは父親に溺愛されて育ち、商売のこともろくに知らぬ十九の若い未亡人だったのだ。しかしながら、この残された一人娘を陰ながらしっかりと支え、商売のいろはを教えて女ながらも立派に大店を切り盛りするまでにしたのは、他ならぬ番頭嘉一であった。

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