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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第4章 春の夢 四

 清七は瓦版を読みながら、つらつらとそんなことを考えた。そうしていると、嫌が上にも一年前の出来事が脳裡に甦る。お須万と半月ぶりに〝みやこ〟の前で再会したあの日、自分を見ていた嘉一のまなざしの冷たさ、険しさがまざまざと思い起こされる。
 瓦版を読む限りでは、実直で働き者の男なのだろう。きっとお須万の良き伴侶となり、伊勢屋の身代をこれまで以上に揺るぎない盤石のものにするに違いない。

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