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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第4章 春の夢 四

 お須万は嘉一から赤児を抱き取ると、いっそう声を上げて泣いた。
―もしかしたら、俺は、これが見たかったのかもしれねえな。
 伊勢屋の先代主人の眼は、確かに間違ってはいなかった。
 嘉一は情も分別も備えた男だ。この男になら、お須万だけではなく、お千寿をも任せられる。
 赤児お千寿を囲んで寄り添い合う嘉一とお須万は、どこから見てももう似合いの夫婦に見えた。

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